真夜中のドキュメンタリー 「黒川開拓団の女性たち」「検証 トイレットペーパー品薄報道」

  • 番組名:「黒川開拓団の女性たち」「検証『トイレットペーパー品薄』報道」
  • 放送局:中京テレビ
  • 放送日時:2020年9月5日(土)24時55分~25時55分

遅くなったけどようやく見た。申し訳ない。

「真夜中のドキュメンタリー」とし1時間に2本のドキュメント番組。前半が「検証『トイレットペーパー品薄』報道」、後半が「黒川開拓団の女性たち」。なぜか中京テレビのホームページの『真夜中のドキュメンタリー」には今回の番組の紹介がないので、単語が正確でないこともあるのをお許し願いたい。

KINGさんがすでにこの2番組について書かれている。きわめて的確な指摘、報道も経験されてる方のさすがの見識だ。ご指摘は僕も全く同感。ならば投稿しなくてもいいはずだが、どうしても指摘したいことがある。

番組内容についてはKINGさんの記事を見ていただければわかるので、ここでは2番組の大きな違いを書いてみたい。

「検証『トイレットペーパー品薄』報道』は中京テレビのニュースの中で、「品薄現象が起きているが品薄ではないので慌てないように』と伝える内容を流したが、その後品薄騒動が拡大するのに拍車をかけてしまった可能性があるという検証。棚にトイレットペーパーがすっかり無い映像が非常に印象的だったので、伝える内容とは逆の内容で多くの視聴者伝わってしまったようだ。昔からこうした安直な映像が不安を掻き立て混乱を引き起こす事例が多くあり、よく問題事例として制作者の中では認識されていた事案である。そのことを番組として検証してみようという心意気は良い。しかし、事の本質にはたどりついてはおらず検証できたのか疑わしい。こうした映像を流してしまった記者、編集マン、報道デスク、番組責任者の声が全くないからだ。視聴者がどう受けとったかヒアリングをしていたが、それは状況の認識であって原因ではない。原因をつくってしまった業務フローになんら言及していない。番組最後のナレーションで「信頼に足る存在である為に表面的な現象を追うだけにとどまらず、新たな伝え方を模索していきます」といってきれいごとで番組を締めた。送る側の総括がないことが最大の欠点。

一方、「黒川開拓団の女性たち』は素晴らしい番組だった。

終戦時の混乱期に開拓団をロシア兵から守るために「接待」という名の性被害にあった15人の年頃の女性が体験した事実、それもその中の多くの人が性病などで亡くなってしまった悲しい事実を当事者である佐藤ハルエさんが生々しく語り、何年もかけてこの地区ではタブーとされていたこの事実をついに公に記録させ、語ることができなかった当事者の女性の多くは亡くなっているものの名誉を回復した話である。

佐藤ハルエさんは実名でこの話を公開し、世の中にこの事実を認知させる活動を長年した。そして慰霊碑にもその悲しい歴史を書き記した。そしてインタビューで「どんな事があろうとも 私なんか恥ずかしい思いもしたし一歩間違えば死ぬ境も通ったのに口をつぐんでいてはだめでしょう。歴史や体験で悔しかったことであろうとも しゃべって残していくのが人間の社会の歴史じゃないですか」。ハルエさんの信念は揺るがず、96才の今も元気に語る。ハルエさんが語るにはきっと語ることを許す家庭環境があったのだと思う。事実を受け止め結婚されハルエさんと共に生き生きとした家庭を作られた旦那さんも相当立派な方だと思う。

ともかく佐藤さんの語った「歴史や体験で悔しかったことであろうとも しゃべって残していくのが人間の社会の歴史じゃないですか」という言葉の重さに敬服する。前半の番組で、番組当事者とりわけ番組責任者が報道によって品薄騒動の一端を担ったことの反省を述べずに検証という矛盾。なぜ検証番組を企画として採用したのだろう。番組責任者の覚悟のなさを余計に感じた2番組だった。

柴垣邦夫