「評価不能 新型コロナワクチンの光と影」(CBCテレビ・ドキュメンタリー)

  • 番組名:「評価不能 新型コロナワクチンの光と影」
  • 放送局:CBCテレビ
  • 放送日時:2023年5月27日(土)午後4時30分~午後5時30分

CBCテレビが夕方の情報番組「チャント!」とYou Tubeチャンネルの中で大石邦彦アナウンサーが2021年夏から追跡取材してきた「コロナワクチンの副反応に関する報道」のこれまでをまとめたもの。一連のこの報道は「第60回ギャラクシー賞報道活動部門」で「推奨」を受賞した意欲的な調査報道だ。この時期に放映されるのは、今年の「日本民間放送連盟賞東海北陸地区審査」対象のものと言ってよく、CBCテレビでは本作以外深夜に放送される機会が殆どで、数字が取れる「せっかくグルメ」に続けて「報道特集」にCMを挟まずぶっつなぎにする編成は、賞獲りに掛ける編成の意気込み(計算)を感じる。

さて、本作はワクチンの効果は否定せず、現実に起きている死亡事案を含むワクチン副反応に起因するとしか思えない現象を放送エリアを中心に時間を掛けて取材し、問題点をあぶり出す。筆者が第一に感じたことは国が緊急承認したワクチンは、医療者、ワクチン接種者にも説明される紙にも、緊急薬で効果を集めつつ接種していること、副反応があることは確かに明記されている。ならば国は安全性に太鼓判を押していないワクチンであるのを理解しているわけだから、それに対して被害が発生しているのであれば「疑わしきは救う」という姿勢が必要ではないか、という政治の判断だと感じたことだった。

大雑把なくくりで接種を「自主判断」として推奨していると言う逃げ道を作っておきながら、(確かにワクチン待望論が席巻していたころは、とにかくワクチンというマスコミを含めた同調圧力的論調はあったのは報道側の反省材料だと思う)、ワクチン接種が原因としか思えないという被害については厳格に判断することなく、こちらも緊急避難的に国策として救うべきだと思った。多くの「被害者」もそう感じていると番組でも描かれている。役人や政治家は相変わらず「状況は認識している。情報を引き続き収集して、しかるべき対応を取る」という木で鼻をくくったようなセリフしか吐かず、大石アナが取材した加藤厚生労働大臣も役人が書いた文章を読み上げるのみ。今謝らなくてもいいから、そこにある被害を広く寛容な姿勢で救いの手を差し伸べるのが政治の役目ではないのか。(さすがに番組ではそこまでは突っ込まないが)番組のタイトル「評価不能」は副反応に対しワクチン接種との因果関係が認められないという判断を表して、政治行政の冷たさを感じる。

「チャント!」のコーナーや今回の特番を観て、筆者の怒りにも似た感想を書いてしまったが、このドキュメンタリー(や番組内での継続的取材)はかつてこの国にあった「サリドマイド」「スモン」「薬害エイズ」に繋がってしまうような「大薬害」が起きてはしまわないか、国民に考える機会、気づきを与えている役目は大きい。今、国は6回目の接種を進めている。一方で5月8日からは感染症対応5類に引き下げ、ガードをインフルエンザ並みに引き下げた。インフルのように「タミフル」や「リレンザ」のような薬もできていないのに。経済も回さなくてはならないから確かに難しい判断ではあろう。だからこそ、踏み込んだ判断をしたのなら、一方で「疑わしきは救う」という政治が望まれるのだ。

ワクチン接種が始まった頃、政府の分科会は「ワクチン接種のメリットとデメリットを比較すると、メリットの方が大きいから接種をお勧めする」というテレビCMを打っていた。デメリットもあるのだということは認めている。同じコロナウィルス系統のインフルエンザ予防接種でも、死亡例が年間100を超える報告はある。年間2000万件の接種に対して、である。こちらもほどんど「評価不能」だ。新型コロナワクチン接種は数億回であり、死亡例は2000超。だが被害者にとっては確率論ではないのだ。接種で死亡したり、心身に回復が難しい副反応が出た人は「一分の一の確率で人生を激変させるデメリット」であったわけだ。多くは熱が出たり体がだるかったりですんでいる人も多いし、第一、ワクチンでコロナから救われた人も多いのだろう(これも厳密なエビデンスがあるとは聞こえてこない)。WHOも、ワクチンの必要はもうないと言っている現状、6回目を進めるとは?一旦止めて検証することはしないのか?番組はいろんな事を考えさせる。片や中国ではまた新型のコロナウィルス感染症が見つかっているという。

筆者は5回目まで接種した。基礎疾患こそ無いが、高齢であり、他人に迷惑を掛けたくないという日本人特有のメンタリティもある。これまでずっと受けたことが無かった(メリットとデメリットを勘案したから)インフルワクチン接種も、同時感染の恐れという情報があったから(現実そうした事象は報告されていないと思う)接種を生まれて初めて受けた。何も起きなかったが、これは「ラッキー」だったに過ぎないのか?

メッセンジャーRNAという手法が今後、ガンを始め様々な病気の対策に使われる手法と聞く。今後もこの問題を始めとして「薬害」に注目して行ってもらいたい。殆どの局がデイリーニュースの単発特集位で済ませている現状、CBCテレビのこの調査報道継続は貴重である。政治や行政に臆すること無く果敢に「影」に迫ってもらいたい。(KING)