「在名民放局制作・年末年始特番を総括」(各局)

  • 番組名:「在名民放局制作・年末年始特番を総括」
  • 放送局:各局
  • 放送日時:2023年年末~2024年年始

在名民放各局が制作した2023年年末から24年年始の特番。たくさんあった。ローカル放送からネット番組、ドキュメントからバラエィまで、筆者が観たのは全部で13本。みなさん一所懸命作られるので、感想を書く方もしっかりと観させていただいた。

全体的な感想として(メーテレさんは情報が少なくて視聴機会が少ないのは申し訳ない)、エンタメ系番組のパワーが少し弱く、ドキュメント系に見るべきものがあったように感じた。以下に観た番組を列挙しておく。

・「太田×石井デララバ(伊勢神宮編)」(CBCテレビ 12月20日 午後7時~ )・「オトナのためのこどもディレクター」(中京テレビ 12月20日 午後11時59分~ )・「立てこもり犯からの手紙 出所→孤独→再犯、そして」(中京テレビ 12月24日 午前0時57分~)・「セーラー戦士 20年目の同窓会」(CBCテレビ 12月25日 午後11時10分~ )・「ワタシ桑ノ集落再生人~限界集落で挑戦した11年~」(CBCテレビ=テレビ山梨 12月29日 午前4時45分~ )・「幸せの証明~乾杯!障害者野球のキャプテン~」(東海テレビ 12月29日 午前0時25分~ )・「サバンナのわが社の星」(テレビ愛知 12月30日 午後4時55分~ )・「さま~ず&ジュニアのコレって変じゃね!?」(CBCテレビ 12月31日 午後3時30分~全国28局ネット)・「ロンブー淳のスマホ旅」(東海テレビ 12月31日 午後4時30分~ )・「お正月だよ!ぐっさん家 うまし国・三重! 伊勢・鳥羽スタンぐラリーSP!」(東海テレビ 1月1日正午~ )・「江戸からきたキラくん」(東海テレビ 1月2日 午後2時~ )・「タマげた実家グランプリ」(中京テレビ 午後4時30分~ )・「LIAR VOICE~ニセモノを探し出せ~」(東海テレビ 1月4日 午後1時30分~ )

メーテレが全く無いのはここの執筆陣が得られるメーテレの編成情報の少なさが致命的。ラテ欄は必死で見ているんだけど。メーテレ関係者の皆さん、何とかなりませんかね。さてテレビ愛知の番組は特番ではないが、普段見る機会が無いので観てみた。得意の工場見学もののひとつといった感じ。CBCの「ワタシ桑ノ集落再生人」はテレビ山梨の2022年の作品でその年の農業ジャーナリスト賞、JNNネットワーク協議会賞を受賞した佳作。山梨県市川三郷町で11年間掛けて荒れた桑畑から桑の葉茶を生産し、企業として大成功した韓国出身のハンさんの苦闘のドキュメント。11年間という時間の重みを感じる。以前「ひまわりと登山靴」でも書いたが、日々の報道枠を持っている地上波の強みは、この継続取材の可能性にある。ハンさんの豪快な性格もあり、見ごたえがあった。未明時の放送とはいえ、番販編成してくれたCBCテレビに感謝。もう一つ印象的なドキュメント、「幸せの証明~乾杯!障害者野球のキャプテン~」は、昨年名古屋で開催されたもう一つのWBC、障害者野球で日本のキャプテンを努めた松元剛さん(50歳)を追ったもの。高校球児だった彼は就職先の感電事故で左手を失い右手も指が3本しか無い。そんな彼も超ポジティブな人間で、大の酒好き。桑の葉茶のハンさんもそうだが、難しい状況で「前を向く」姿勢にさまざまな事を考えさせられた。番組が松元さんのキャラクターもあり陰気にならないのが好ましい。番組の半分が松元さんが呑んでいるシーンだが(そこが面白いのだが)、よくまとめたドキュメントだと思った。

中京テレビ「立てこもり犯~」も10年という時間が経過したドキュメンタリーだった。犯人の手紙を読むと極めて高度な知識を要求される文章が綴られていて、学があると思わせるが、そうした人物が何故罪を犯すのか。記者とともに戸惑いを共有できた。更生を誓った犯人が再犯を犯すのは、果たして「孤独」「孤立」だけであろうか。親の育て方が間違っていたのか、筆者には多重人格者のように思えてならない。番組は後半、別の出所者に話題を変える。理解のある運送会社に運転手として勤めている彼を追うことにより、先の犯人との差を描く。「家族のように扱ってくれ、失敗しても理解し、諭してくれる。自分は一人ではない」と感じていることが大きいとまとめる。が、前半の犯人は結局犯人の性格がよくわからないままで、丁寧な取材ではあったが、前半の犯人のあまりにも特異な性格に、二項並列で論じることの難しさ、すなわち出所者を社会がどう扱うかの難しさを、取材記者と共に考えてしまった。力作であったとは思うが、前半の犯人のあまりにもの特異さが番組が主張するような「社会的孤立」から救うことで解決できない闇を持っているようで、取材対象者としては難しい人物ではなかったかと感じた。

期待して観た作品が「オトナのためのこどもディレクター」だった。前作はここでも感想を書かせてもらって、視聴者にカメラを預けるという斬新な手法から生まれる視聴者の新しい心の動きの誕生という点で高く買わせて頂いた。その後担当Pのインタビューもここで読むことが出来た。だから第2弾(正確には3弾)には期待した。正直な話、前回ほどのインパクトを感じなかった。観るほうが慣れてしまったのだろうか。無手勝流の魅力が、上手くまとめようとする力学に負けたか。それとスタジオコメンテーターの喋りがうるさく感じた。3人は多いのではないか。それぞれのパートは考えさせられる内容になってはいたが、初回に観た猥雑なパワーみたいなものが、上手く整理された感じとなった気がした。筆者だけかもしれないが。今回全体のトーンが「産んでよかったよ」「ママのこどもで良かった」という均一な気分に収斂されたからかもしれない。気の利いた質問をする素人を探し当てるのは大変だとは思うけど。それとラストのシソンヌ長谷川の涙は筆者には余計な事と感じた。ブラジル編があるみたいなのでもう一度期待してみよう。

毎年観てここに感想を書かせて貰っている東海テレビの新春エリアドラマ。ローカルにこだわって制作を続けている。開局60年から始まったと記憶している。今年で6作目ということになるのかな。頑張っている。今年はどんなアイデアを見せてくれるか、と思っていたら、西尾市政70周年とコラボしてタイムスリップもどきの物語を作った。アイデアは面白いと感じたし、筆者自身途中まで吉良上野介が本当にタイムスリップしてきたのかと思っていた。個人的に残念だったのは、ラストの描き方。そう欠点があるとは思えない恋人がいる雲母とキラくんが簡単に仲良くなってしまう顛末はいかがなものか、と。終わりよければ全て良しとは感じられなかった結末が筆者にはもやもやとして残った。

バラエティ群はレギュラーの拡大版が安定して面白かった。東海「スマホ旅」は、毎度面白いのだが、最後に淳が自分の誕生会をプロデュースする下りが筆者としては白けたというか引いてしまった。名店から脱した「デララバ」は伊勢神宮へ。どうなるかと思ったが、手堅くまとめてあって面白く観た。CBCの特番「コレって変じゃね!?」は、大晦日の夕方というあまり好位置とは思えない全国枠。ネタ探しも大変だと思うけど、それぞれのネタにさま~ずの二人とジュニアがどう絡むか何を言い出すかが面白さの鍵で、彼らに救われていた感じだ。かつて正月にネット番組を放送していたCBCは、もっと手間暇を掛けた番組を作っていたと記憶するが、ロケも少なく一枚写真をスタジオタレントがイジる「大喜利」番組になってしまっていて残念だ。制作費の問題なのだろうか。中京「タマげた実家グランプリ」も昨年の衝撃が強すぎたのか、今回はおとなしい印象。街頭インタビューからとんでもない風習を持つ家を探し当てる手法を徹底したほうが面白いと思うのだが。今回はどこか準備されていた感が強かった。東海「LIAR VOICE」、最近本人そっくりに歌うものまねさんの番組を多く見る中で、どんな感じだろうかと拝見した。失礼ながらアバターの出来が良いとはいえず、歌に集中出来なかった。同工異曲の番組を多々あるなかでもう一捻り欲しかったところだ。

最後に付け加えたい。今年の元旦はいきなり能登地震、羽田の事故で幕を明けた。同じ中部圏である在名局報道も大変だった(今でも大変だろうが)と推察する。各局エリア内外で震度いくつで特番に入る、というルールを持っていると思う。エリア外の場合は基本ネット編成に準じるだろうが、CBCーTBS 系の踏ん張りが目についたことを特筆しておきたい。ミニ枠を開けたのも早かったし、初期の映像も現場にたまたまTBSスタッフがいたこともあり、一頭抜けていたし、特番時間も長かった。この手の特番はNHKを観てしまうのだが、放送局の義務、矜持、サービスとして「報道のTBS」の覚悟を確認した思いだ。また羽田の事故も「TBS NEWS DIG」というアプリでNHKとは別アングルの炎上映像の中継を続けていて、スマホ時代の情報の棲み分けについても考えさせられた。もちろん先鞭は「NHK防災アプリ」ではあるが。

正月特番は在京プロダクション制作のものも多いが、それを考慮しても在名各局は頑張って番組を作っている。ここに書いていない特番もたくさんあった。全部見るのは不可能なのでお許し願いたい。また厳しい意見を書かせていただいた事も、もっともっと経営も制作現場も地上波のチカラを信じて欲しいと願っているからほかならない。今年もせっせと感想を書かせていただきたいので、「書きたい」と思わせる番組の制作をお願いしたい。(KING)